◆へちまちゃん亡き後のペットロスとの向き合い方

へちまちゃん
飼い主さんは「昔こんなことあったよね。覚えてる?」と、へちまちゃんによく話しかけていた
 しかし、その後、飼い主さんはペットロスに苦しめられることに。買い物中、ごく自然に猫用品を買おうとしては「もういないんだ」と気づき、涙することもありました。

「ペットロスって何も手につかず、セルフネグレクト状態になるのだと思っていましたが、そうではなくて日常のふとした瞬間に空虚感が襲ってくるんです」

 また、これまではへちまちゃんのために自宅の片づけをしていたので、部屋は大荒れに。SNSのフォロワーから「へちまちゃんが戻ってきたとき、部屋があまりにも変わっていたらびっくりしちゃうよ」と諭されたことで汚部屋は改善されたものの、愛猫を亡くすことの重みを改めて痛感しました。

「小さな部屋が、果てしなく広い寂しい空間のように思えてしまう。今も乗り越えられてはいないけれど、泣きたいときは泣くでいいと思っています」

 月日が経つにつれ、少しずつ前を向けるようになってきた飼い主さん。今は、あの世で再会できたときに恥ずかしくない人生を送ろうと奮闘している最中です。どんな別れ方をしてもついて回る後悔に浸るのではなく、最上級にかわいい愛猫と長い時間、共に生きられた幸せを噛みしめようと、考え方を変えました。

「へちまに、おはよう、おやすみ、ただいま、行ってきますと言うのは今も日課です」

 いろんな景色を、へちまにも見せてあげたい。そう話す飼い主さんの腕には、お骨が入ったブレスレットが。2人は今でも、一緒に笑い合う家族です。

<取材・文/古川諭香>

【古川諭香】

愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291