シリアの首都ダマスカスは、古来から様々な王朝、帝国に支配されながら現在まで絶えることなく歴史の中で息づいてきた世界最古都市のひとつです。今回は、ダマスカスへ訪ねたら必ず行っておきたいスポットをご紹介します。

シリアの首都ダマスカス

シリアの首都ダマスカスは、古来から様々な王朝、帝国に支配されながら現在まで絶えることなく歴史の中で息づいてきた世界最古都市のひとつです。砂漠のオアシスともいえるパラダ川沿岸に位置するダマスカスは、紀元前2000年以前から南部のアラビア半島、メソポタミアと地中海地方を結ぶ交易の中継地として発展しました。そして、第2次世界大戦後の1946年にシリアの首都となるまで、4,000年もの時を経て激動の歴史を繰り返してきました。

ダマスカスには、世界最古にして最大とされる巨大なスークや、イスラム教の第四聖地であるウマイヤ・モスクのある旧市街など、悠久の歴史を刻む情景が今もなお存在しています。

今回は、ダマスカスへ訪ねた際にお勧めのスポットをご紹介します。

旧市街

ダマスカスの旧市街は、数千年もの歴史を誇る世界最古級の街です。城壁に囲まれ、細い路地の入り組む迷路のような空間に、モスク、スーク、宮殿、教会、レストランや一般家屋がひしめき合っています。街並みも古く、まるで中世にタイムスリップしたような空間です。

ウマイヤ・ モスク(Omayyad Mosque)

ウマイヤ・モスクは、ダマスカスの旧市街にある世界でも屈指の歴史をもつ最古のイスラム教モスクです。

上述のとおり、ダマスカスはエジプト、メソポタミアと地中海を繋ぐ交易路にあり、紀元前2000年紀にはすでに聖域とみなされ、この場所にはメソポタミア神話における雷神ハダドを祀る神殿がありました。ローマ時代に、この場所は木星神ジュピターを祭る神殿と変わり、4世紀末には、神殿のあったこの聖所にキリスト教の洗礼者、ヨハネの教会が建てられます。

661年、イスラム教カリフのムアーウィヤ1世がウマイヤ朝を成立させると、ダマスカスに首都を置き、第六代カリフのワリード一世が715年にここをモスクへ改築。現在のウマイヤド・モスク(現存する最古のモスク)が完成しました。

尚、6世紀ごろまで洗礼者ヨハネの首がここにあると信じられており、現在でもモスク内部に聖ヨハネの首が納められているといわれる神殿があります。モスク建設中には実際にヨハネの首が発見されたとされていますが、真相は不明です。

イスラム教徒の間では、世界の終末の日における救世主イエスの再臨がウマイヤ・モスクにおいて実現するという信仰があり、十字軍侵略の時代においては各地のムスリムを繋ぐ結節点となりました。サラーフッディーン・アイユービーの霊廟は、このモスクの北側の壁に付属した小さな庭の中にあります。

サラディーン廟 (Saladin's Mausoleum)

ウマイヤド・モスクの北門の外にあるサラディーンの廟です。

サラディーンは、エルサレムをはじめ十字軍に支配された各地を片っ端から奪い返したアラブの英雄です。

ジュピター・ゲート

ウマイヤ・モスクの正面には、ジュピター神殿だったころのゲートが遺っています。

アゼム宮殿(Azem Palace)

1749年にダマスカスの統治者であったアッサード・パシャ アル・アゼム(As'ad Pacha Al-Azem)によって建てられた邸宅です。現在は民族博物館として一般公開されています。

展示されているのは、アラブの寺小屋やハマム、メッカへ巡礼の様子を再現したものまであります。

そのほか楽器、 シリアの工芸品、装飾品、洋装品全般など多岐にわたります。

ハーン・アサド・パシャ(Khan Asad Pasha Al-Azem)

ハーン・アサド・パシャは、ダマスカス旧市街で最大のキャラバンサライです。

キャラバンサライとは、長距離移動する商人や巡礼者の団体が利用していた宿泊施設のことです。キャラバンサライはペルシャ語で「キャラバンの家」を意味し、主に交易路沿いにありました。上階には小部屋が続きます。

ここはアル・ブズリーヤ・スーク沿いに位置し、1751年から1752年にかけてダマスカスの知事を務めたアサド・パシャ・アル・アズムにちなんで建設されました。

スーク(Souq)

ダマスカスの旧市街で最大の見どころの一つはスークです。 この中で最も人のにぎわうのは、ウマイヤド・モスクから続くスーク・ハミディーエで、全長およそ600mのアーケードとなっています。

このふたつのスークを繋いでいくつか小さなスークが路地にいくつもあり、生活必需品や食品が売られているほか、

シリアらしい工芸品や食器なども多く並んでいます。

城塞

ハミディーエ・スークへ入る手前には高い城門が構えられています。

聖アナニア教会(Chapel of St. Ananias)

聖アナニアはダマスカスで最初のキリスト司教です。

新約聖書では、失明したサウロに洗礼を授け、彼の改宗を促したとされ、聖パウロ誕生のきっかけとなったアナニアの家が教会となっています。

地下に礼拝堂があります。

聖パウロ教会( St. Paul's Church (Bab Kissan ))

新約聖書では 、改宗したパウロがユダヤ教徒からの報復を避けるため、夜陰に乗じてかごに身を伏せ、当時の東門から外へ 逃げたとされています。その門がこのバーブ・キサーンです。

外観はアラブ建築ですが、内部はギリシア正教の聖パウロ教会です。

マリアミテ大聖堂(Mariamite Cathedral)

マリアミテ大聖堂は、ダマスカスで最も古いギリシャ正教会の1つです。

最初の教会が建てられた時期は不明ですが、ダマスカスがイスラムになったのち西暦706年まで閉鎖されており、洗礼者ヨハネ教会がウマイヤ朝モスクに改築された補償としてキリスト教徒に返還されました。

その後、この教会は何度か破壊され、再建を繰り返し、最後に改修されたのは 1953 年です。

ムスタファ・アリ・アートギャラリー

ムスタファ・アリはシリアを代表する彫刻家です。エレガントで記念碑的な彫刻で知られる彼は、30年近くアラブ世界で広く活躍しました。

ムスタファ・アリの作品

Hotel Talsman

ダマスカス旧市街に位置するタリスマン・ホテルは、もとは富裕層の住む邸宅を改装したホテルです。

一階には当時の装飾や調度品がそのまま展示されています。

当時の優雅な生活を垣間見ることのできるホテルです。宿泊せずとも見学をさせてもらえるので、もし時間がありましたら寄って見られてください。

城壁の門

ダマスカスの旧市街は城壁に囲まれており、いくつかの城門も遺っています。

東門(バーブ・シャルキー)

トーマス門(バーブ・トゥーマ)

ローマ記念門