◆コミュニケーションに“正解”がある?

――理系女ちゃんの作品に登場する男性を見ていると、「男性とはこうあらねば」という思い込みにとらわれているようにも見えます。「自分からデートに誘わなければ」「恋愛では男性が女性をリードするもの」というような。

理系女ちゃん:コミュニケーション能力は経験を積みながら養っていく要素が大きいものだと思いますが、対人経験が少ない人は、コミュニケーションの取り方に“正解”があると錯覚しているのではないか、と感じることはあります。たとえば「3回目のデートで必ず告白するべき」「どういうことを言うと女性が喜ぶ」など、ネットに落ちてるソースを鵜呑みにしたままのコミュニケーションをしてしまう、という意味です。

でも、それはまだいいほうで、「自分がうれしいことは、相手もうれしいはず」という仮定のもと、行動に移してしまう人もいます。

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先輩視点と後輩視点の違い(画像:理系女ちゃん@rikejo_chan『先輩は綺麗な人だった』)

『先輩は綺麗な人だった』で、先輩にあたる女性は「別にセクハラをされるわけでもない」と思っている。たしかにあからさまな接触や、強引な誘いはない。誰もが“被害”と断言するようなわかりやすさが、ない。

また理系女ちゃんは昨年の夏、『ハラスメントを告発した話』という作品をXに投稿している。そこで描かれているのは、男子学生から女子学生へのハラスメント。

理系女ちゃん漫画
ここでもまた、男子学生は恋愛だと思っている。女子学生は“ただの同期”としか思っていない。食事の誘いなどを断り、恋人がいることを伝えたところ、関係がギクシャクし、彼から嫌がらせを受けるようになる――というハラスメントの過程と、告発したあとの大学や教員の対応が描かれている。

一読して感じるのは、「ハラスメントを、ハラスメントとして認めてもらう」ことのむずかしさだ。