かっちりと人間によって作り上げられた建築空間ではなく、自然の偶然性に建築的空間を見いだすという考え方は、平田建築の大切な要素のひとつといえるだろう。

太田市美術館・図書館 (2017) (C) Daici Ano

先述の「太田市美術館・図書館」も、平田氏のコンセプトを具現化した建築作品。区切られた空間や内と外が絡まりあう「からまりしろ」を実現した地域のランドマークとして市民に愛されている。

3章立ての展覧会、見どころチェック!

このたびの展覧会「平田晃久―人間の波打ちぎわ」は、「波打ちぎわ」という新しい言葉を軸にした3章立てとなっている。

1章目は、平田建築の核をなす「からまりしろ」。「からまりしろ」の建築は、人間と動物の波打ちぎわ(境界やあいだ)に現れるものといえる。

2章目と3章目は、「響き」がテーマ。これは共鳴というような感覚に近いかもしれない。無数の人々の思いの共鳴、はたまた過ぎ去った時間と現在との共鳴、あるいは今こことどこか遠くの場所との共鳴…。そういった「響き」を持った建築は、私たちがかつて知っていた「人間」の意識を広げていくような、からまりしろとも違う「人間の波打ちぎわ」を予感させるだろう。

Taipei Roofs (2017) (C) Dean Cheng

同展では、スケッチや模型、インスタレーションを中心に、この「波打ちぎわ」を体験的に理解できる空間を作り上げる。2017年に台湾に建設された「Taipei Roofs」など、建築のプロセスを垣間見る貴重なスケッチと模型の展示、20件以上におよぶ平田建築にテーマごとにアプローチする展示が見どころだ。

また、建築を体験し、学ぶイベントも開催予定とのこと。

この機会に、建築家・平田晃久氏の世界観を感じてみては。

■平田晃久―人間の波打ちぎわ
会期:7月28日(日)~9月23日(月・休)
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1丁目36−16
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
休館日:月曜日 ※8月12日(月・休)・9月16日(月・祝)は開館、8月13日(火)・9月17日(火)は休館
観覧料:一般1,000円、高校・大学生および65~74歳800円、中学生以下および75歳以上無料(その他各種割引制度あり)
URL:https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/bunka/museum/tenrankai/hirata_060728_0923.html