なぜ飽和状態になってしまったのかといえば、斜陽産業となりかけているテレビ局にとってドラマが大きな希望となっているからだ。最近のテレビ局は配信事業に力を入れているが、2023年1~3月期の「TVer」の総合番組再生数ランキングでは上位9位が連ドラが占められており、バラエティよりも圧倒的に再生数を稼いでいる。実際、苦戦中のフジテレビでも『いちばんすきな花』は配信で比較的好調だ。
さらに、ドラマはDVD販売や再放送といった二次的利用がやりやすく、ヒットすれば映画化で大きな放送外収入が見込める。Netflixなどのネット配信サービスを通じて、世界進出を目指すことも可能だ。また、近年のバラエティはコンプライアンス強化で規制が強まり、スポンサーが集まりにくいこともあり、バラエティを減らしてドラマを増やそうという方向に大きく傾いたようだ。
しかし、考えることはどの局も同じ。各局がこぞってドラマを増やした結果、飽和状態になって「総負け」という最悪の事態になっているのではと指摘されている。視聴率だけでなく、配信においてもドラマが増えすぎれば限られたパイの奪い合いになり、結果的に共倒れになりかねない。
とはいえ、今年最大のヒットドラマとなった『VIVANT』(TBS系)のようにコンテンツとして魅力があれば、ドラマが増えようとテレビ離れが進もうと視聴者から支持を得ることはできる。今後、視聴者のドラマ離れをどのように食い止めていくのか、テレビ業界の大きな課題となりそうだ。