◆人生の最終目標は自叙伝を出すこと
本を前にして、ほしのさんは穏やかな笑みを浮かべる。
「子どものころから、人生の最終目標は自叙伝を出すことだったんです。こんなに早くかなってしまったけど、とてもうれしいです。僕、何も考えていないように見られるんですけど(笑)、案外堅実にいろいろ考えているんですよ。僕の人生は小さな目標の積み重ねで,少しずつ進んできたなあと思っています」
優しい温かみのある声と笑みが場を和(なご)ませる。
ほしのさんは1989年に群馬県に生まれた。父は再婚で、10代の息子を連れて母と結婚し、ほしのさんが生まれた。ところが2歳のときに両親が離婚。彼は母の実家で、祖父母と4人で暮らすことになった。母が看護師として多忙だったため、祖父母に溺愛されながら育った。
「今はシングルマザーも多いけど、うちは田舎ということもあって当時はいなかったんですよね。だから授業参観や学校行事でお父さんが来るべきときは、母か祖母が来ていた。他の家と違うのが恥ずかしいというのはちょっとありました。でも、お父さんがほしいとは思わなかったですね。父親の記憶がないから、どういう存在なのかがわからなかった」
ただ、父がいなかった分、母に嫌われたくないという思いは強かったと振り返る。母もいなくなったらどうしようと、わけのわからない不安に襲われたこともある。母に褒められたくてテストもがんばる。そんなふうに思っていたという。