◆人を困らせないために、個性を殺して“いい子”になった結果

 3話はまず椿が小学校時代を振り返るところから始まった。落ち着きがなく好奇心旺盛という“個性”を持つために教師をたびたび困らせていた、“いい子”ではなかった過去を回想。その経験から、個性を殺すことにより“いい子”になることに成功して、誰からも嫌われない代わりに、特に誰からも好かれない今の椿が完成した、という経緯が語られる。

『いちばんすきな花』
木曜劇場『いちばんすきな花』3話より(以下同じ)©フジテレビ
 ただ、個性を押し込めることには限界があり、椿は煙草を吸わないにもかかわらず、喫煙所で初対面の中年男性に対して「どこ行っても、誰にでもいい人って言われます」「みんなが言ういい人って、怒らない人ってことなんですよね。だとしたら僕はいい人じゃないです」とマシンガントークを披露。

 椿は1話で夜々(今田)が勤務する美容院に行ったシーンでも、初対面の夜々に本音をぶつけていた。初対面かつ二度と会う可能性のない人に、個性的な部分をさらけ出すことでバランスを取っていたのだろう。「初対面の人と出会える場を探し求めることは、“いい人”という呪いを一瞬でも振り払うために編み出した椿なりの処世術なのかな」と考えると切なくなる。