介護をするのは親が高齢になってから、そして自分もある程度の年齢を重ねてからと思っていませんか?実は世の中を見渡すと、18歳未満でも20代でもすでに介護をしている若い世代が存在しています。そんな彼らを「ヤングケアラー」と言います。そこで今回は、突然直面するかもしれない介護と若年層との関わりについて考えてみたいと思います。
ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーという言葉を知っていますか?「聞いたことがない」「具体的には知らない」など、反応は人それぞれでしょう。しかしどちらかというと、よく知らない人の割合が多いのではないでしょうか。まずは、ヤングケアラーにはどんな意味があるのか説明します。
要介護状態の家族をケアする若い世代の介護者のこと
ヤングケアラーとは、要介護状態の家族の介護や家事、兄弟姉妹の世話、家計のためのアルバイトなどをしている若年層の介護者を指します。通常であれば大人が対応しますが、家庭の状況や家族構成によって若い世代がケアしなければならない状態となっているのです。
18歳未満の介護者をヤングケアラー(子どもケアラー)と呼び、18歳から30歳代までの人を若者ケアラーと呼んでいます。ヤングケアラーは、学校生活や進路に支障のある子どもたちもいますが、その実態はよく分かっていないのが実情です。
高校生が家に帰って祖父母の介護をすることも……
兄弟姉妹が障害を持っていたり、親が急に病気になったりなどヤングケアラーになるきっかけは、家庭によってさまざまです。たとえば、収入を安定させるために親は仕事が忙しく、祖父母の介護を高校生がせざるをえない状態となっている家庭もあります。
超高齢社会を迎えている日本にとって実は深刻な問題
高齢者が全て介護を必要とするわけではありませんが、介護が必要になる可能性を考えれば、やはり高齢者になるほど高まるでしょう。総務省統計局の調べによれば、2019年9月15日現在、65歳以上の高齢者は3,588万人で全人口に占める割合は28.4%です。高齢者の数も比率も過去最高の水準になっています。
こうした状況から総合的に考えると、これからも介護を必要とする高齢者が増え、ヤングケアラーも増える可能性は否定できないでしょう。
ヤングケアラーが置かれている状況は?
必ずしも実態が明らかではないヤングケアラーですが、いくつかの調査結果からその状況を垣間見ることができます。
15~29歳で介護に従事しているのは約21万人
ヤングケアラーが全国でどれほどの数になっているか、その実態は明らかになっていません。総務省統計局が5年ごとに実施している2017年就業構造基本調査の結果によると、15歳から29歳で「介護をしている」数は、全国で約21万人となっています。
この調査では、15歳未満は調査対象ではなく、29歳までと年齢も幅広くなっています。そのためヤングケラーの実態を示すにはほど遠い内容ですが、介護を行っている若者層が少なからずいることを示唆しています。
学生では全体の約3割に影響がある
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2019年に「ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書」をまとめています。この調査は、全国ほとんどの自治体に置かれている要保護児童対策地域協議会を対象に行われたもので、結果、ヤングケアラーを認識している協議会が27.6%でした。まだまだ認識が乏しいことが分かります。
また、この調査ではヤングケアラーとして把握されている子どもたちの調査も行っており、そこで浮き彫りになったのが学校生活への影響です。ヤングケアラーのなかには、支障なく通学できている学生もいるようですが、約3割の学生が「学校にあまり行けていない」と回答しています。
さらに内容を詳しく見ていくと、学校に行ってはいるものの「授業に集中できない、学力が振るわない」が12.3%、「忘れ物が多く宿題をしないことが多い」が10%、「友だちとの関係がおもわしくない」が6.6%となっています。