トルコの宮廷歴史ドラマ『オスマン帝国外伝』の舞台となったイスタンブールに、ドラマに登場したサフィエ・スルタンとトゥルハン・スルタンが建設したイェニ・モスクがあります。モスクと周辺の複合施設であるヒュンキャル・カスル、トゥルハンの霊廟をご紹介します。

サフィエ・スルタンとトゥルハン・スルタン

イェニ・モスク 外観

イスタンブール歴史地区エミノニュには、ひときわ目立つモスクがあります。旧市街と新市街を結ぶガラタ橋や新市街側からもよくみえるこのモスクはイェニ・モスク(トルコ語:Yeni Cami)と呼ばれ、エジプシャン・バザールやリュステム・パシャ・モスクと並んで、このエリアの観光名所にもなっています。このモスクの建設を開始したのはオスマン帝国第13代目のスルタン、メフメト3世の母であるサフィエ・スルタンでした。1597年、サフィエはスルタンの母(母皇后)の権威を民衆に示すためにモスクの建設を開始しました。しかし建設の途中でメフメト3世が亡くなり、母皇后の地位を失ってしまうと、それに伴ってモスクの建設も中断せざるを得なくなりました。その後、モスクは手つけずの状態で野放しにされていましたが、約半世紀後、当時宮廷のハレムで権威を振るっていたトゥルハン・スルタンによって完成させられました。トゥルハンはわずか6歳という年齢で即位した第19代目スルタン、メフメト4世の母としてハレムのみならず政治にも介入し帝国を影ながら統治していました。新しい(yeni)母皇后によって完成させられたことから、モスクはこのような呼び名で親しまれることになりました。

ミマール・スィナンの作品に似せられた構造

イェニ・モスク 内部の様子

イェニ・モスクの構造は、トルコ史上最高の建築家と評されるミマール・スィナンが数多く残した作品の構造にとてもよく似ています。中央の大ドームを複数の半ドームが支える構造で、大理石の柱がドーム天井を支えています。この構造は、同じ歴史地区内にあるシェフザーデ・モスクや、ミマール・スィナンの弟子が設計を担当したスルタンアフメト・モスクによく似ています。イェニ・モスクの内装は女性らしさの中にどこか力強さも表現されているデザインで、まるで当時の帝国での女性の権力を示しているかのようです。細やかな装飾やイズニックタイルの美しさに注目しながら見学してみてください。