叶井 そうなんだ。
倉田 想像を裏切らない面白さでしたね。当時はもっとギラギラしてましたから。どういう男が好きかっていろいろあると思うけど、うちは父がネガティブな人だったんですよね。私自身にもそういう要素がないわけじゃないし、男のタイプがそればっかりってわけじゃないけど、父は割とネガティブな傾向が激しくて。
叶井 機嫌悪いのよね。不機嫌な人はきついな、オレも。
倉田 この人は、何もそういうのがないんです。不機嫌な日がない。明るい男っていいなと思いましたね。この人ほど、良くも悪くも、ものを考えない人って周りにいなかったですから。叶井俊太郎って人は問題解決できないこともあるんだけど、そのことに悩まないで済むんです。私がいなかったら、この人はもう死んでると思うんだけど、私のような、ちょっと横で助ける人間がいれば、何も考えない人がいちばん幸せだと思う。破産したときも債権者集会の前の日のことを覚えているんですけど、「明日めんどくせえな、やだなぁ」とか言いながら、すぐ寝ましたから。むしろ私のほうが寝れなかった。何かが頭を占領して眠れなくなる経験を、まったくしてないと思う。
叶井 してないね。
倉田 本当にないんですよ、悩んだことが。
叶井 「がん」って言われた当日は、ちょっと落ち込んでたんじゃない?
倉田 いや、落ち込んでない。
叶井 がんになっちゃった、みたいな感じだった?
倉田 なかなかこういう人、いないですよね。私、割と相手に引っ張られるほうなんですよ。だから、こういう人で本当に良かったと思う。やっぱり相性ですよね。この悩まない人に対して、腹が立つ人もいると思うんです。何あんた、何も考えないのね、なんて切れちゃう場合もあるだろうから。相手によっては。
叶井 (2022年4月に受けた)余命半年の宣告は、何とも思わなかったね。半年か、10月で死ねると。
倉田 私、何回も死ぬマネされてますから。