◆大納言公任はただただすごい?

 寺山修司らとともに前衛短歌の一時代を築いた塚本邦雄の著書『新撰 小倉百人一首』にこんな一説が。

「必ずしも歌人としての才能に、特に恵まれていたとは考えられない」

 これが平安中期を代表する屈指の歌人・藤原公任に対する評価なのだから驚く。古文の授業では、百人一首の大納言公任はただただすごいと教わるばかりで、こんな視点全然なかったじゃない。

 こういう視点って、例えば正岡子規が実は『古今和歌集』は「くだらぬ集」と一刀両断したように後世の偉大な文化人の力技なわけで。ドスが利いた塚本の鋭さに、ブスッと一突きされた感覚になる。