◆躁鬱が激しい親の言動に振り回された

――作中はコミカルなシーンも多い一方で、家族間の悩みもありのままに描かれていました。とくに、お母さんに預けていたお年玉を生活費に使われていたときのエピソードは、真に迫るものを感じました。

五十嵐:正直、自分のお年玉を勝手に使われた事件は、今も根に持っていますね(笑)。母は統合失調症の影響もあって、1日のうちに躁鬱の状態が変わったり、長期的に調子が悪くなったり……。調子が悪いときは、夜中に喘息の発作が出て咳が止まらない私に「うるさい!」と怒鳴ったり、躁状態のときは「ローンを組んでマンションを買う」と言い出したり、毎日母に翻弄されていました。

母の本当の病名については、高校生になるまで長らく「不眠症」とか「高血圧だから」とはぐらかされていましたが、ケンカになったときに「私は本当は統合失調症なの! だから仕方ないの!」と、勢いでカミングアウトされたんです。

『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』15話より
『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』15話より
母も病気で苦しんでいたとは思いますが、もっと早く教えてもらえていたら、兄も私ももう少し違った対応ができたのかもしれない、兄も心を病まずに済んだのかもしれない……という気持ちはありますね。子ども心に母の言動に困惑していて、兄も私も母の顔色ばかりうかがう子どもになっていたと思います。