ところで、パリオリンピックは開催したが、日本勢は今のところは善戦しているようだ。

 今回は何らかの形でテロがあるのではと心配していたが、開会日当日、鉄道爆破が起こり、不安を感じさせた。

 五輪直前、喫煙と飲酒行為が発覚した日本女子体操のエースである宮田笙子(19)が五輪辞退という騒動が、まだ尾を引いている。

 巷では、喫煙、飲酒ぐらいで五輪辞退をさせるのは酷だ、みんなやっているじゃないかという声もある。

 一生に1度かもしれない五輪出場の機会をそんなことぐらいで奪うのは可哀そうという同情論もしきりである。

 私は、彼女が1回だけというのは考えにくいし、日本体操協会が定める行動規範がある以上、辞退はやむを得ないと考える。

 だが、今週の文春を読むと、体操界では飲酒は分からないが、喫煙はむしろ“常識”だったようで、体操協会も“黙認”してきたのではないかというダブルスタンダード疑惑が浮かび上がっているのだ。

 宮田は元々プレッシャーに弱いと見られていたようだ。

「主将に指名されて突然、日本体操女子のエースとして日本を引っ張る立場になってしまった。その状況に、気持ちが追い付いていないように見えました。いつもプレッシャーを感じているようで、試合前にも極度に緊張している。しっかり成績は残すのですが、大きな大会前日には、取材にも蚊の泣くようなか細い声で答えていました。囲み取材ではしょっちゅう、自分を奮い立たせるようなことを口にしていた」(宮田を取材した経験のある記者)

 バルセロナ五輪の銀メダリストの池谷幸雄はこう証言している。

「僕らの時代は九五%の選手が吸っていましたよ。体操はプレッシャーがやストレスが強くかかる競技なので、精神を落ち着かせるために喫煙する選手は多いです。五輪に出場する選手でも吸っていました。大学の練習では一種目が終わるごとに吸いに行く人もいたくらい。

 他の競技と比べれば、体操には持久力が求められないので、煙草を吸っていても大きな影響は出ない。近年でも吸っている選手は多いと思いますよ」

 あの体操のレジェンドもヘビースモーカーだったというのである。

「元日本代表で現在は体操協会の理事を務める内村航平氏(35)です。過去四回の五輪で、個人総合二連覇を含む七つのメダルを獲得したレジェンド。彼は日本体育大学時代から紙煙草を吸っていましたが、在学中からすでに特別扱い。大会前だろうがおかまいなしでしたが、体操協会からも黙認されていました。好みの銘柄はメビウスで、『電子タバコはおいしくない』と言っていた」(日体大関係者)

 体育協会が内村や池谷の喫煙は黙認していて、今回の宮田の喫煙には「五輪資格はく奪」という厳しい判断を下したのはなぜなのか?

 協会はこの疑問に答える責任がある。

 さらに文春は、過去にも宮田が鯖江高校のとき、「寮で部活の後輩に飲酒を強要した」と騒ぎになり、体操部の活動も停止になったことを体操協会は“熟知”していたはずだというのである。

「体操協会で現在、女子日本代表のコーチを務めているのは、鯖江高校時代の宮田の恩師である田野辺氏なのです。体操部の監督を務める田野辺氏が、騒動を知らないはずはありません。つまり体操協会は、飲酒強要騒動を把握する立場にありながら、あくまで『飲酒は一度きり』と公表したのです」(宮田の知人)

 文春は、「事態の矮小化を試みる体育協会の姿勢が、五輪開幕直前の代表辞退という最悪の結末をもたらしたのではないか」と難じる。

 だが、早くから要注意人物だった宮田を放置しておいて、タレコミであわてて宮田を査問し、辞退させたというのは、私には納得がいかない。

 何やら、これ以上メディアに追及されると大騒動に発展する「事件」のようなものがあったのではないか。それがどのようなものかはわからないが、この問題は五輪後も尾を引くような予感がするのだが。