今回、さいたまスーパーアリーナに4万人の観衆を集めた『超RIZIN.3』。ノンタイトル戦、しかも朝倉は2連敗中、平本はMMAでわずか6戦して3勝3敗という、競技トップではない選手同士がメインイベントの興行としては異例の動員となった。

 その原動力となったのは、YouTubeやブレイキングダウンなど多方面で活躍してきた朝倉の知名度と、平本の長年にわたるSNSでの自己プロデュースのたまものだろう。2人がRIZINという団体の外で積み上げてきた扇動的なやり取りが話題を呼び、総合格闘技という競技としてではなく、2人の物語としての結末を見るために集まったのが4万人の大半だったはずだ。

 その朝倉を失えば、RIZINにとってはこの上ない痛手となる。話題性先行で興行を打ってきたRIZINは、自ら定めたタイトルに権威をつけることができていない。それどころか、一度は現在のタイトルホルダーである鈴木千裕にマニー・パッキャオとのエキシビションマッチに出場させる決定を下すなど、タイトルそのものを軽視するようなマッチメイクも平気で行ってきた。

 そうした場当たり的で姑息な興行スタイルは団体そのものの成熟を阻害してきた。初期からRIZINを支えてきた那須川天心がボクシング界に去り、堀口恭司に続いて朝倉海も高い競技レベルを求めて海外に舞台を求めた。ここで朝倉未来まで姿を消すことになれば、RIZINにとってはまさに死活問題である。

 28日は、平本蓮の夜になった。だが、平本のMMAでの現時点での戦績は4勝3敗(1KO)という平凡なものである。今のRIZINに平本の成長を待つ胆力があるか、自前でスターを育てる戦略があるか。日本の総合格闘技界の行く末が試されている。