◆面接会場には開始数分前のスベり込みセーフだったが…

 空港からの電車の中でメイクを直し、駅に着いてドアが開いた瞬間、リクルートスーツ姿で走りだす梨乃さん。爆走した甲斐があったのか、最終選考の控室に開始数分前に到着。まさに間一髪でした。

「ほかの人はみんなすでに来ていて、私が最後でした。ただ、係の人から15分ほど開始が遅れることが伝えられたんです。そうだとわかっていれば駅から歩いて来ても間に合ったんですけどね(笑)。

 それでも控室でひと息つけるだけの時間ができたため、ゼーハーと息切れしていた呼吸を整え、気持ちを落ち着かせることができました」

面接を受ける大学生
 その会社は彼女にとっては本命のひとつで、役員相手の最終選考の面接でもしっかり自己アピールに成功。個人的には手応えがあったそうですが、残念ながら採用されることはありませんでした。この結果にしばらく立ち直ることができなかったといいます。

「しかも、乗り遅れた新幹線のきっぷは特急料金を除いた運賃分しか払い戻しされなかったんです。おまけに新たに買った航空券は、通常料金だったので新幹線より割高で片道2万5000円はしました。さらに伊丹空港までのタクシー代と合わせておよそ3万円の出費です。

 そのせいで大学の学食代すら出す余裕がなくなり、家で毎日もやしに納豆、豆腐の激安食材を使った料理でしのぐハメになってしまいました(苦笑)」

 面接に遅刻することは回避できましたが不採用に終わり、想定外の出費で家計も圧迫。危機一髪どころかモロに被害を受けてしまったような気がしますが……。

―シリーズ「危機一髪だった瞬間」―

<文/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。