老後2,000万円問題や年金問題など、老後の資金に関する報道で将来に対してネガティブなイメージを持つ人も多いでしょう。貯蓄額が少ない高齢者がいるのは事実ですが、実は安心して暮らしている高齢者のほうが多数派との調査結果もあります。少子高齢化が顕著となる現在でも、過去の調査と比較すると働き続ける高齢者も多いことから、生涯現役を目指すことが生活の防衛にもつながる可能性が見えてきました。
高齢化の状況、調査から見る令和の最新状況
内閣府が発表している「令和2年版高齢社会白書」によると、日本の総人口1億2,617万人(2019年10月1日現在)のうち、65歳以上の高齢者は3,589万人となっており、総人口の28.4%、つまり3割に迫る人数となっています。
これまでの推移を見ると、1950年には65歳以上の高齢者人口の割合(高齢化率)は5%程度だったのが、1970年には高齢化社会の基準となる数値である7%を超えました。その後、1995年に高齢化社会と呼ばれる14%を超え、現在では28%超の超高齢社会となっています。
高齢者人口のピークは2042年の3,935万人、その後減少すると予測されています。一方で人口減少により若い世代が少ないことから高齢化率は上昇を続け、2065年には38.4%、約2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。
現在60歳以上の人たちの暮らし向きについて
内閣府の「高齢者の経済生活に関する調査」(2020年1月に60歳以上の男女を対象者に実施)の結果によれば、「現在の経済的な暮らし向き」について74.1%、約4分の3が心配なく暮らしていると回答しています。
その内訳は、20.1%が「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」、半数を超える54.0%が「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」でした。前回の2016年の調査では「心配なく暮らしている」と答えたのは64.6%で、今回は大きく割合を伸ばしたことになります。
60歳以上が不安に思っていることは?
高齢者は、退職によって収入がなくなったり、働き方の変化で収入が減少したりします。貯蓄に加え、年金や退職金といったお金で生活をまかなうのが一般的でしょう。
働き盛りの世代にとっては、高齢になると経済的に不安が出てくるのでは……と考えてしまいます。しかし、前出の「令和2年版高齢社会白書」(2020年1月実施)の結果では、意外なことに60歳以上の34.2%は、今後の生活で、経済的な面で「不安と思っていることはない」と答えています。
不安がある場合の内容は、多い順に「自分または家族の医療・介護費(30.8%)」「自力で生活できなくなった際の転居や老人ホームへの入居費(26.0%)」「収入や貯蓄が少ないため、生活費がまかなえなくなること(25.8%)」と、生活費より医療や介護にかかる費用を心配する人が多くなっています。