近年のNHKで目立ったのはカネ絡みの問題だが、その中でも最大の不祥事は『紅白歌合戦』にも携わっていたチーフプロデューサーによる横領事件。共謀した番組企画会社の社長らが放送作家として『紅白歌合戦』に関わったように装い、NHKから番組構成委嘱料として約6230万円をだまし取ったとして、実刑判決を受けた。

 「国民の受信料」が横領されたともいえる大スキャンダルで、NHKは刑事事件として立件されなかった被害についても民事訴訟を起こし、合計で約1億2500万円の支払いが確定した。ところが、昨年12月に稲葉会長が参院総務委員会に参考人として出席した際に「回収の見込みが立たなくなり、被害総額のおよそ1億2500万円を償却処理した」とサラッと発言。「受信料が原資」である巨額の横領金が未回収のまま、ひっそりと事件が終わっていたことが今さらながらに明かされた。

 同事件に端を発して、NHKでは局員によるカラ出張や取材経費の不適切処理などが相次いで発覚。2022年にも、総額約1億8000万円にのぼる不正な交通費の申請・換金を繰り返していたとしてNHK子会社の元社員が詐欺容疑で逮捕されている。繰り返すが経費の原資は「国民の受信料」なので、世間からの信頼を失わないためにも徹底追及すべきだが、NHKが「再発防止策」などを大々的に発表したことはない。

 また、2022年には『紅白歌合戦』の総合司会を3年連続で務めたこともある阿部渉アナが、30代の女性局員との「局内不倫」を報じられたが、NHK側は「職務規程に違反した事実はない」として処分せず。阿部アナはラジオ番組を降板したが、それも本人からの申し出だったとされている。

 横領事件の被害金をうやむやで終わらせ、再発防止策を世間に公表することもなく、身内が不祥事を起こしても対応が甘い……とすれば、確かに「他社に上から目線で厳しく言えるような資格があるのか」という気がしてしまう。そのような声が出ないためにも、NHKは自社の不祥事にも厳しく臨む態度を見せてほしいものだ。