「PL出身監督は、立浪、松井、今江の他に尾花高夫(横浜 2010~2011)、平石洋介(楽天 2018~2019、※2018年はシーズン途中からの監督代行)がいますが、尾花は2年連続最下位、平石は1年目が最下位、2年目は3位でしたが契約満了で退任。いずれも寂しい結果に終わっています。2軍監督まで範囲を広げても、厳しい結果になっています。近年でいうと、片岡篤史(中日 2022~2023)、サブロー(ロッテ 2023~)、桑田真澄(巨人 2024~)らが2軍監督をやっていますが、片岡は2年連続最下位、サブローは昨年最下位、桑田は現在5位と、いずれも低迷。ファームは勝敗にそれほどこだわらないとはいえ、片岡もサブローも勝率は3割台で、ちょっと負けすぎです」(同上)

 これだけの人数がいて、1軍だけでなく2軍でもダメとなると、いよいよ「PL出身は指導者には……」という声が出ても不思議ではない。PLは、これまで登場した5人の他に清原和博、宮本慎也、今岡真訪、福留孝介、前田健太などが卒業した高校野球の超名門校。甲子園で春夏あわせて7回も優勝を飾り、プロ野球選手が100人近く輩出していて、実績は申し分ない。それなのになぜ監督としてはダメなのか? ベテラン野球ライターは、その理由をこう推測する。

「PL出身監督の共通点は、彼らが極めつきの野球エリートだということです。PL全盛期の1980年代から90年代、スカウティングは全国に及び、入部が許されたのは全国各地の天才野球少年ばかり。その中でレギュラー争いを勝ち抜き、プロでも成功して監督までたどり着いた人間は、野球に関して挫折を知りません。監督という立場になり、“何でこんな簡単なことができないの?”という思いを抱えているに違いありません。また、PL時代の異常に厳しい寮生活の経験も、監督で上手く行かない一因かもしれません。PL野球部はとにかく厳しいことで知られ、清原和博は『1億円もらっても1年生には戻りたくない』と言ったほど。PLのOBがバラエティ番組で語る『先輩には“はい”と“いいえ”以外、許されない』『目覚まし時計の鐘が鳴る前に起きなくてはいけない』といったエピソードを耳にしたことがあるでしょう。絶対的な上下関係で育った彼らでも、今やそんなやり方が許されないのは百も承知ですが、若手選手とのコミュニケーションに苦労しているように見えます。立浪は厳しすぎてベンチから笑顔が消え、選手が萎縮しているように感じますし、松井は優しすぎてベンチから緊張感が失われました。根っこまでしみついた“先輩には絶対服従”という感覚とどう向き合うかが、指導者としての成功のカギでしょう」

 今やPL野球部は廃部となったが、“PL魂”を見せられるか。