■なんだかモラルの崩壊を感じる
こういうジャンルの作品では、主人公が知恵を絞って「ルールの裏をかく」ことが醍醐味となります。
『カイジ』の「沼」でいうところの「ビルそのものを傾けちゃう」みたいな、大胆な謀略。ちゃんと考えたらいろいろおかしいかもしれないけど、それに説得力を持たせるだけの勢いのある演出。そういうものを期待して見ているわけですが、カードにマジックペンで落書きしたりコマを壊したりって、ドラマを作る側のやってることが「ルールの裏をかく」ではなく「ルールの穴を後から作る」ということなんですよね。サッカーに例えたら、シュートを打った後にゴールを動かしてる。
物語を作る上で、最低限自分たちが提示した条件くらいは守るのが作り手としてのモラルだと思うんですが、そういうモラル的な部分が崩壊している作品だと感じるんです。あのー、最近ちょっとバズった霜降り明星・せいやの「性格最悪な武田鉄矢」が麻雀でイカサマしまくるネタがあるんですが、あの感じ。せいやはあえて悪しざまにすることで笑いにしてますが、あれをテレビドラマで堂々とやられてる感じなんです。
ゲームの勝敗に、照朝は「グングニルについて知ってることを全部話せ」という要求を賭けましたが、いざゲームに勝ってみたら、負けたほうの人が「き、記憶が……!」みたいになってるのも、単なるイカサマでしかない。視聴者に提示された約束事が次々に反故されていくので、マジメに見てマジメに楽しもうという気が削がれていく。
Amazon Primeと協業で世界進出なんて言ってたのでちょっとは期待してましたが、知恵比べのドラマを作って出来がよくないということは「ニッポン人は知恵が足らん」という評価を受けることになるわけです。なんとかしてくれ。
(文=どらまっ子AKIちゃん)