どいつもこいつも、価値観を更新する気がない。ドラマが、登場人物たちを変化させるつもりがない。物語を展開させるつもりがない。要するに、このドラマには言いたいことがないのだ。

 だから回想シーンばかりになる。

 新しく撮った高校時代の回想ばかりでなく、このドラマでは頻繁に同じシーンが使われます。ちょっと誰かがしゃべったら、すぐに10分前の映像が出てくるようなことが繰り返されているのです。本当に伝えたいことがあれば、1分1秒だって無駄にしたくないものです。何もないから、ぐるぐるシーンを使い回すしかないんです。過去に寄り掛かる登場人物たちの思想そのままに、作劇も過去に寄り掛かっているんです。

 そしておそらく、そういう作劇が無意識に行われている。モブだった看護師の過去に含みを持たせることや、眞栄田郷敦に新たな悲劇をハメこむことで、何かを語ったような気になっている。