バンタム級のウエイトは53.5kg。2.3kgオーバーのネリはその時点で、2階級上のフェザー級の選手だったことになる。

 当然、保持していた世界タイトルは剥奪されたが、その後に課された当日計量の条件をネリがクリアしたことで試合は成立。山中には「卑怯者のネリを倒せ」という大きな期待がかけられることになった。そして山中自身の中にも、この試合に絶対に勝たなければならない理由があった。

 その7カ月前の17年、山中はネリにタイトルを奪われている。4ラウンドでのノックアウト負け。13度目の世界タイトル戦で防衛を果たせば、具志堅用高が持つ日本記録に37年ぶりに並ぶことになる重要な試合だった。

 この試合で山中はネリの豪打にさらされながら、決して倒れなかった。フラフラとリング上を彷徨うチャンピオンを救ったのはセコンドからのタオル投入だった。

 自陣のギブアップによる、王座失冠。山中のダメージは明らかだったが、このセコンドの判断もまたファンの間では大きな議論を呼び、再戦への機運は高まっていった。