◆作品世界の外の橋本愛
「私にとってこの社会は平等じゃないから」
とても切実なフレーズ。社会の中で弱い立場に置かれる人々を常に描いてきた脚本家・宮藤官九郎のテーマ性が集約されている。そしてそれが橋本愛の口から発せられることが重要。
風俗嬢の金銭トラブルや難民申請のサポートまで、無料相談で支援する舞はソーシャルな人物だが、作品世界の外の橋本愛も社会に対して意識的な態度の人だ。そのことがはっきり打ち出されたのは、2023年、橋本が自身のInstagramのストーリー上で、トランスジェンダー女性の公共施設利用に言及して、「そういった場所では体の性に合わせて区分する方がベターかなと思っています」と発言し物議をかもしたとき。
この発言に対して橋本は、謝意を込めた文を再投稿。自分の認識不足を正直に謝り、芸能人による問題発言後の対応としては理想的というか、まともな態度に写った。しかもそれで済まさないところが、橋本愛という人。
『週刊文春』での連載「私の読書日記」でコラム「われらはすでに共にある」を掲載。文頭、「私がこれから記述する、極めて短期間で学んだ知識、表現、言葉には、依然として理解の足りていない内容が含まれる恐れが十分ある」と丁寧にエクスキューズしながら、Instagram上での発言からこのコラム掲載までの間に、できるだけ理解を深め、問題提起とともに、この先も現在進行形でアップデートすることを表明した。