◆娘の立場から「妻の視点」へ
――今回の作品は、妻の立場から若年性認知症の夫を支える姿が描かれています。吉田さんは子どもの頃に、お父様が脳に障害を負い、お母様が介護される姿を見てきたそうですが、違う視点から執筆したことで気づいたことはありましたか?
吉田いらこさん(以下、吉田):自分が子供だった頃は、父の病気のことはただ傷ついていればよかったんだなと思いました。
妻は子供の保護者側の立場なので、夫の看病だけでなく、子供のことも考えなければならないので責任が重く、本当に大変だと感じました。
――執筆にあたって、お母様に当時のことを聞いたりしたのでしょうか。
吉田:当時は、母は子供に詳しい病状などをあまり話さなかったんです。だから今回、どういう経緯があったのか、具体的にどんな手術をしたのか、細かいことを改めて教えてもらいました。
――お母様のお話で特に印象的だったことはありますか?
吉田:医療費がいくらかかったのかは大人になってから初めて教えてもらいました。今になって、「どれだけ大変だったんだろう」というのが少し分かるようになりました。
また、行政のサポートやサービスに関しては何があるのか全然分からなかったので、どんな援助を受けられるのか祖父母も協力して探してくれたそうです。