◆息子を忘れたのかと無言で責める妻/苛立つ夫
夫婦の気持ちはすれ違い続ける。
沈んでいる美咲を喜ばせようと、おいしいドーナツを買ってきた透。だが美咲は、「優ちゃん、それ食べられないから」とにべもなく拒絶する。アレルギーだった息子の目線で生きている妻に夫は愕然(がくぜん)としながらも、「そうだな」と箱ごとゴミ箱に捨ててしまう。
息子のことを忘れてしまったのかと無言のうちに責めるような言動をとってしまう妻、そして前に進めないことに苛立つ夫。
美咲は運転免許をとりたいと夫に伝える。免許なんかとらなくていい、用があるなら自分が車を出すからと言う夫。
「時間が合えば」と言う夫に、妻はふっと冷笑し、「合ったことなんてないから」とつぶやく。なんか絡んでくるね、確かに暇じゃないよ、オレのスケジュール見る? 夫もそうやって妻に絡んでいく。
ふたりとも口調は静かなのだが、お互いの苛立ちがどうにもならないほど空中でこんがらがっていくのが視聴者には見える。
そして夫が社運をかけた仕事の日。妻はその仕事をめちゃくちゃにするような仕掛けを、「仮面さん」の指示のもと、やりとげる。その帰り道、美咲は初めて、うっすらと微笑んだ。