◆そのときにしか着られないものがある

 年を取っていくと、着られないもの、履けないものがふえてきます。

 例えば今の私は8センチヒールの靴で家を出て、都内の地下鉄を乗り換えて目的地にたどりつくほどの体力はありません。またどんなにお腹の肌を見せるルックが流行っても、今からそれをやろうとは思いません。そして、肌が乾燥するため、冬場にケミカルレースがついたランジェリーは着られなくなりました。

 日本の気候も変わりました。ファッションには流行があります。そして自分自身も年を取ることにより変わっていき、着られないものがふえていきます。

 そう考えると、そのときにしか着られないものがあるとわかります。若い時には若い時なりの、年を取ってからは年を取ってからなりのものがあるでしょう。経験できる季節も毎年が同じものではない。流行りのシルエットと色も変わっていく。自分の肌に合うものがずっと合い続けるわけではない。ずっと同じように続くものなど何もない。