長髪を揺らし情熱的にタクトを振る“音楽の未来を作るロックな指揮者”(※)、グスターボ・ドゥダメル氏のドキュメンタリー『ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦(原題:¡Viva Maestro!)』が、10月4日(金)より、角川シネマ有楽町、恵比寿ガーデンシネマほか全国で順次公開される。

ベネズエラの若き指揮者・ドゥダメル氏


ドゥダメル氏は、1981年1月26日にベネズエラに生まれ、10代の頃から天才指揮者として名だたる巨匠たちの薫陶を受けてきた。


2004年「第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール」優勝、2009年に弱冠28歳で名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任するなど、たちまちクラシック界で注目を集めるとともに、『TIME』誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」にも選出されている。

特に、母国の若手音楽家から成るシモン・ボリバル・ユースオーケストラを率いたレナード・バーンスタイン作『マンボ』の演奏動画は世界中で拡散され大ブレイク。2016年にはコールドプレイ、ビヨンセ、ブルーノ・マーズと共にスーパーボウルのハーフタイムショウに出演した。

来たる2026年には、ヒスパニック系で初めて、アメリカで最も伝統あるオーケストラ=ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任することが決まっている。

逆境に立たされたドゥダメル氏の挑戦

『ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦』は、そんなジャンルの枠を超えスターへの階段を駆け上がり続ける、クラシック界の新ヒーローの物語……となるはずだった。

しかし撮影中に予想外の事態が発生。2017年、政治的混迷を極めるベネズエラの反政府デモに参加した未来ある若き音楽家が殺害された事態を受け、ドゥダメル氏は現マドゥロ政権への訴えをNYタイムズ紙に展開したのだ。

大統領府と対立したことで、シモン・ボリバル響とのツアーは中止となり、祖国へ足を踏み入れることすらも禁じられてしまう。

さらに、ベネズエラを代表する音楽教育プログラム「エル・システマ」の責任者という立場から、それまで政治的に沈黙していたドゥダメル氏は、世論の批判にも同時にさらされることになった。

しかし、祖国の若者達と交わした「いつか必ずまた指揮をしに行く」という約束を胸に、ドゥダメル氏は世界各地でタクトで語り続ける。

そのさなか、偉大なる恩師であり「エル・システマ」創設者マエストロ・ホセ・アントニオ・アブレウ氏が、2018年3月24日に死去。その志を未来へと受け継ぐ使命を果たすべく、ドゥダメル氏の挑戦は続く。