◆海猿以前は軟弱キャラを演じていた
一見、野村も伊藤も二枚目なのだが、あえて伊藤に軟弱ですっとぼけた三枚目役を担わせることで、映画全体にユーモラスな要素を導入している。「海猿」以後では想像がつかない伊藤英明の柔らかな魅力が溢れていた時代。
もうひとつ、伊藤を代表する軟弱キャラ作品がある。フジテレビ開局45周年記念ドラマとして唐沢寿明主演でドラマ化され、大学病院医学部教授たちの権力闘争を描いた『白い巨塔』(2003年)だ。伊藤は、唐沢扮する財前五郎教授に目をかけられる下っ端医局員・柳原弘を演じた。
いかにも弱々しい感じの柳原は、いつも猫背でびくびくしている。先輩や同僚たちからは軽んじられているが、ちょっとした打算から財前教授だけはとりたてようとする。財前教授から医療ミスの責任をなすりつけられた柳原が、裁判の傍聴席から反旗を翻す場面は同作の大きな見どころだった。