◆古いけど新鮮に感じる“ダークな昭和”
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は原作者である漫画家・水木しげる氏の生誕100周年を記念するアニメ映画。興行収入約27億、観客動員数190万人以上という大ヒットとなりました。1960年代に漫画誌連載が始まった「墓場鬼太郎」「ゲゲゲの鬼太郎」の原点である、「鬼太郎がいかにして誕生したのか」を描いています。
舞台は、まだ敗戦を引きずる昭和31年の日本。映画冒頭ではゴミで汚れた川や生気がなくやつれた人、たばこの煙でいっぱいのオフィスが映り、昭和のダークな雰囲気に引き込まれます。主人公のサラリーマン・水木と、鬼太郎の父(のちの目玉おやじ。作中ではゲゲ郎と呼ばれるので、以下ゲゲ郎)が訪れる哭倉村(なぐらむら)は、木造の家々が並び、自然が多くノスタルジックです。
単に服装や建物を昭和っぽくするだけではなく、登場人物や世間の価値観、言動、灰皿などの小物に至るまで当時のものを意識して制作されているので、現代の私たちはむしろ目新しい感覚をおぼえるのです。
横溝正史原作の映画『八つ墓村』や『犬神家の一族』を彷彿させる凄惨なシーンや嫌悪感をおぼえるような発言が多くあり、ドキドキハラハラさせられます。アニメ映画にもかかわらず、PG-12指定されていることから、子供向けというよりも大人が楽しむ映画として制作されたことがわかります。
こうした、古いけど新鮮さを感じられる雰囲気や、ファンの多い作品のオマージュなど大人が楽しめるポイントが多いのです。