相続は、土地や資産をたくさん持っている人に限って生じるものではなく、ほとんど全ての人に関わってくると言っても過言ではありません。相続とは何か、また残された人はどんな手続きが必要となるか、さらに分からないことを誰に相談すればいいかなどを解説していきます。

相続は、資産家に限った話?

「うちに大きな資産はないし、年金だけで暮らしているから相続なんて関係無い」と考えている人は多いかもしれません。しかし、乳幼児や子どもが亡くなるような場合を除いて、相続はほとんど全ての人に関わってくるものです。

なぜなら、相続はこれまでに築き上げてきた財産を、プラスもマイナスも含めて子どもなど特定の人に引き継ぐことだからです。

例えば、親が病院で亡くなった場合、未払いの治療費などがあれば、これを妻や子どもなどが精算しなければなりません。住んでいた家や家財も残ります。これらを整理することなどを含めて、全てを相続といいます。

相続税を納めている人は、どのくらい?

前述の相続によって引き継いだ財産の中から納める税金が、相続税です。実際に、どのくらいの人が相続税を納めているのでしょうか?

国税庁の集計によれば、2018年の被相続人数(死者数)のうち、相続税が課税された割合は8.5%でした(「平成30 年分 相続税の申告事績の概要」)。

この統計では2009年から2014年は4%程度、2015年からは8%ほどで推移しており、少なくともここ10年の間で相続税が課税されているのは、亡くなった人(被相続人)のうち4~8%程度となっています。

相続で必要な手続き

では、相続をしていく上で必要となるのはどのような手続きでしょうか?ここでは、亡くなった人自身に関わる手続きと、相続人に関わる手続きとに分けてチェックしていきましょう。

亡くなった人自身に関わる手続き

<亡くなった日から7日以内に行う手続き>
・死亡診断書の取得、死亡届の提出
・死体埋葬火葬許可証の取得

<10~14日以内に行う手続き>
・年金受給停止と年金受給権者死亡届の手続き
・国民健康保険証の返却
・住民票の抹消届および除票の申請
・世帯主変更届

<4ヵ月以内に行う手続き>
・準確定申告(故人の所得税の確定申告)。

相続人に関わる手続き

<なるべく早く行うこと>
・遺言書の有無と必要があれば検認
・財産調査と相続人の確定
・遺産分割協議書の作成
・不動産の名義変更
・預金口座や証券口座の解約

<必要があれば3ヵ月以内に行うこと>
・相続の放棄
・相続の限定承認

<該当すれば10ヵ月以内に行うこと>
・相続税の申告

<2年以内に行うこと>
・埋葬料や高額療養費の請求(国民健康保険)

<3年以内に行うこと>
・生命保険金の請求

<5年以内に行うこと>
・未支給年金や遺族年金の請求

詳しくは、銀行や弁護士、税理士などにご確認ください。

元気なうちに、相続について考えておきたい

ここまで紹介した一例は、いわゆる“手続き”であって、それぞれの家庭によって必要な相続や、故人と相続人の想いといったところには触れていません。

後になって故人の気持ちを確認することは当然できないので、元気なうちにじっくりと話し合うことが重要です。この時点で財産の棚卸を行うことができれば、相続税が生じるか否かの見込みも分かってくるでしょう。