兼髙の娘である東都新聞記者・道上香苗(水川あさみ、以下道上)もまた、何者かが自宅に侵入し、BG株事件の調査ノートのみ持ち去られてしまう。清家を総理大臣にするという目標を掲げる鈴木は、陣営の汚れのないイメージを保持するために、兼髙と道上の調査内容を破棄したかったのだろうか。そうなると「その実行役は誰か?」という話になるだろう。不慮の交通事故死に見せかけた殺人、住居侵入、窃盗となんでもありの人物のようだが……。裏稼業のプロであることは間違いないが、実行役もまた清家・鈴木の同級生の可能性があるのかもしれない。かつてのナチスドイツをけん引したヒトラーとそのブレーン・ハヌッセンの関係性を清家と鈴木になぞらえて物語が進行する同作品だけに、その裏で手を汚していた人物がいても不思議ではない。

 そんな清家の政治家人生といえば27歳で初当選、43歳で初入閣と順風満帆すぎるほどの人生だ。総理大臣の座へと続くサクセスロードを築くため、鈴木が16年前に自動車事故で急逝したと見られている政治の師である地元代議士・武智(小木茂光)や兼髙を始末していたと思われたが、美恵子(田辺桃子)という“真のハヌッセン”候補が登場した。清家の元恋人である美恵子。第2話では美恵子に心底ほれこむ大学時代の清家の姿が映し出された。

 気になるのは、美恵子に支配されハヌッセンを否定するようになったと思われる清家が、現在は鈴木と再びタッグを組んでいることだ。美恵子が支配者、清家と鈴木が“操り人形”となって政界をのし上がるという構図なら合点がいく。となると、美恵子と清家・鈴木はいまも関係があるということになり、現在の美恵子こそ謎の女(高岡早紀)ではないかとよぎる。謎の女は料理店・春吉の店主・佐々木(渡辺大)に詮索の電話を入れていたからだ。ただ、美恵子=謎の女と断定するのは時期尚早だ。がめつさが前面に出る美恵子と、上流階級の気品がただよう謎の女は似ても似つかない。謎の女こそが清家を操る“真のハヌッセン”であり、欲にかられた美恵子は当の昔に始末されている線もある。

 鈴木が誰もいない病室でハヌッセンが43歳で亡くなったことを知り絶句していたことから、鈴木の交通事故は自作自演ではないだろう。何者かの手引きによる“暗殺未遂”だとすれば、指示役は清家、はたまた謎の女か。ただ、清家の政治家人生を考えれば、国民の心をつかむ人心掌握力・プロデュース力に長けた鈴木を失う影響は大きい。清家自ら優秀な参謀を手放すようなマネはしないはずだが、第2話エンディングの清家の冷酷な表情を見ると……。鈴木暗殺をやりかねないと正直思ってしまった。