アクション映画に大切なのは「サプライズ感」

 佐藤健主演の時代劇『るろうに剣心』(12年)が興収30.1億円のヒットを記録して以降、日本映画界ではずっとB級扱いされてきたアクション映画がようやく陽の光を浴びるようになりました。実写版『るろ剣』が成功したのは、メインキャストに半年以上しっかり殺陣のトレーニングを積ませ、アクションシーンの撮影にも手間暇を費やしたことが大きな理由のひとつでしょう。「邦画でここまでのアクションを観れるとは!」という新鮮な驚きがありました。

 この「サプライズ感」はとても大切です。『キングダム』では大将軍・王騎役のために20kg増量した大沢たかおの過剰な役づくりに加え、それまでアクション経験のなかった長澤まさみが超絶二刀流を披露し、観客の視線を釘づけにしました。

 信が戦場を初体験する第2作『キングダム2 遙かなる大地へ』では、かねてから身体能力の高さが評判になっていた清野菜名が本気の殺陣を披露し、観客を魅了しました。あの華奢な体で「ここまでやれるのか」という驚きがありました。華のあるアクションシーンは、スクリーン映えします。

 その点、観客の目が慣れてしまった『キングダム 運命の炎』は、サプライズ感には乏しいかもしれません。秦国王となる吉沢亮を助ける闇商人役で杏が出演しますが、実写ドラマ『妖怪人間ベム』(日本テレビ系)のベラ役でブレイクした杏にしては、ややインパクトに欠ける役どころです。弓矢より鞭のほうが、彼女も使い慣れていたのではないでしょうか。