■2つの構造を持つドラマ
パッと見では、3人は「定時に帰る」ことを標榜しつつ「酒も仕事も人間関係もヌルいほうがいい」という価値観こそ共通していますが、あんまり“似た者同士の3人組”という感じではないんですよね。
休日に6時間以上もジグソーパズルをやってる西条(松岡)は、まさしく「ナード」な人として描写されています。人と目を合わせないし、自分のことをしゃべり出したら止まらなくなったりもする。第1話の最後でイケメンの隣人(白洲迅)にデートに誘われ、喜ぶでも拒否するでもなく「なんで?」と戸惑う姿は、まさしく社会性ゼロ。そんな西条はものすごい記憶力を持っていて、だいたいの証拠から事件の真相がわかってしまう。
シングルマザーで婚活にも積極的な吉良(田中みな実)は心理学に精通していて、プロファイリングとかできちゃう。
おせっかいで物事をきっぱり言い切らないと気が済まないタイプの基山(滝沢カレン)は交通課勤務で、地域の情報はすべて頭の中に入っているし、なんでも地図や地理に例えてしゃべりたがる地図オタク。
こう見ると、かろうじてギークっぽいのは交通課の基山なわけですが、3人の特技が3人とも、ものすごく警察の仕事の役に立ってるので「ギーク」という言葉の持つ「なんか無駄にめっちゃ詳しい」というニュアンスの「無駄」の部分がなくて、しっくりこないんです。
と、長々とタイトルにいちゃもんをつけてしまいましたが、個性の違う3人の「定時に帰りたい女たち」が周囲のブラック環境に辟易しながら働く“お仕事ドラマ”としては、けっこう楽しいものになりそうです。松岡茉優の「社交性がないから、なんでも言えちゃう」というキャラ設定とか、あとやっぱり普通に「定時なので帰ります」って帰っていく姿なんて爽快感がありますからね。ライフワークバランスを整えていくことは社会的にも大きな目標になっていますし、これはこれで今のヒロイン像にも見える。そういうのが、ひとつめの構造。