◆スマートな演技一本勝負でテーマそのものに
本作を読み解く鍵は、数字ではないのは明白だと思う。もっと画面上の演技を見てほしい。繰り返しになるが、山下の演技の温度を各場面ごとに敏感に感知できるか、できないか。「日の出前と日の入り後のわずかな間」にしか観測されないブルーモーメントのように、山下智久を感じられるか、感じられないのか。
つまり、山下の演技自体が、本作のテーマそのものだというと。これまで彼が演じてきた過去作の演技の集大成でありながら、ザ・山Pと言えるような要素は極力削ぐことで、ギュッとスマートに集約されている。
人命救助という点では、山下を代表する「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズ(フジテレビ)とテイストは似ているのに、同シリーズや『正直不動産』など、冒頭で必ず上半身をさらけ出していた山P的なものはどこにも見当たらない。第4話で「限界だ」と言って、白衣を脱いで、ネクタイを緩めることはあっても素肌までは見せない。
筋骨隆々な山下が脱ぐのは、もはやサービスショットを超えた署名のようなものなのだが、スマートな演技一本勝負で、新たに署名を書き換えたかのような本作の山下智久が、どこまでも清々しく写る。