妊娠が分かって、生まれてくる子との生活を楽しみにしている人も多いでしょう。しかし、安心して出産するためにお金のこともしっかりと確認しておきたいものです。出産に健康保険や医療保険は使えるのでしょうか。この記事では、知っているか否かで大きな差がつく、出産にまつわる費用を解説します。

出産にかかる費用は施設・地域によって大きな差

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病気やケガをしたときに使える各種健康保険は基本的に出産時には使えません。しかし、つわりが酷い場合や、帝王切開で出産するなど母体の保護が必要なときは保険証を使用し治療を受けることができます。

出産は自由診療となるため、分娩方法、施設、そして地域によって費用には違いがあります。一般的に費用は、分娩は自然分娩より帝王切開などの医療介入がある場合、地域は地価の影響から地方より都市部のほうが高額になりやすい傾向にあります。

公益社団法人国民健康保険中央会のデータによると、施設別の費用は、助産所、診療所、病院の順に高くなっています。費用面では助産所での自然分娩がもっとも割安ですが、母子に不測の事態が起きる可能性もゼロではありません。施設は費用だけでなく、万が一のこともふまえてじっくり考えましょう。

正常分娩では民間の医療保険は使えない

「健康保険が利用できなくても、医療保険に入っているから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかし、医療保険でカバーできるのは医療行為が必要になったときだけです。妊娠中の医療行為と見なされるのは前述した重度のつわりのほか、妊娠高血圧症候群や貧血などの治療が必要なときです。

また出産の際に医療行為と見なされるのは、帝王切開の手術費や、陣痛促進剤、吸引・鉗子分娩手術などです。加入している保険商品によっては、保障の対象とならないこともあります。民間の医療保険に加入している場合は、事前に適用になるケースを確認しておくと安心です。

妊娠・出産時の費用の内訳と全国平均

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国民健康保険中央会の2016年(平成28年度)の調査によると、正常分娩時の出産費用は全国平均で50万5,759円でした。入院費用は都道府県別に見ると東京都がもっとも高額。中央値は49万3,400円で、内訳としては分娩料が半分ほどを占め、その次に入院料、新生児管理保育料が続いています。

ただし、この金額に妊婦健診やマタニティ・ベビー用品の費用は含まれていないので注意が必要です。それでは出産にかかる費用をもう少し詳しく見てみましょう。

妊婦健診費用

妊婦健診とは、妊婦の健康状態や赤ちゃんの発育状態を定期的に確認するための健診です。厚生労働省は、妊婦健診の回数は出産までに14回程度行うのが望ましいとしています。

健診費用は公費の助成を受けられますが、血液検査や超音波検診、子宮頸がん検診などは原則自己負担です。ただ、自治体によっては費用の一部を助成する制度を実施しているので、お住まいの自治体に確認してみるといいでしょう。

なお、妊婦健診にかかる自己負担額の平均は5万円程度と言われています。

入院費用

国民健康保険中央会の2016年(平成28年度)の調査によると、入院日数の平均は6日で、入院費用の平均額は11万2,726円。ただし、大部屋だと落ち着かない、産後は一人部屋でゆっくりしたいというときには、これに加えて差額ベッド代を支払うことになります。

分娩費用

分娩費用は、分娩方法によって自己負担額に大きな差があります。医療行為なしに赤ちゃんが産道を通って生まれてくる正常分娩の場合の費用平均は約25万円(2016年国民健康保険中央会の調査結果)。正常分娩には保険が適用されませんので、全額自己負担です。

一方、異常分娩には吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開などがあります。異常分娩の手術費用は、各種健康保険や民間の医療保険も対象となりますが、手術にともなって入院日数が2~3日長くなることも珍しくありません。

厚生労働省の調査で、分娩件数に占める帝王切開の割合は増加傾向にあることが分かっています。また、40歳以上で初めて出産する妊婦の3割は緊急帝王切開になることが報じられました。初産年齢の高齢化が進む日本では、今後この傾向が強まっていくと考えられます。

こうしたことを踏まえると、分娩費用の自己負担額は増加傾向にあると言えそうです。

検査・処置費用

入院費用や分娩費用のほか、新生児管理保育料(平均5万円)や、出産後の母体の状態に応じた処置や乳房ケア、産褥(さんじょく)指導料(平均1万4,000円)もかかります。

妊娠・出産時に脳性まひを発症した家庭の経済的負担を軽減するための産科医療補償制度の掛金や、出生証明書、ベビー服のレンタル代やおむつ代などのこまごまとした費用もかかります。