■めるるの顔芝居と水槽の演出

 ITイケメンの律くん(宮世琉弥)と付き合っていたことを思い出したまことさん(めるる)、じゃあやっぱり律くんと付き合うべきだと考えて、律くん好みの服を着て水族館デートに出かけます。

 必死で楽しいデートを演出してくれる律くんに笑顔を見せようと努力するまことさんでしたが、やっぱりちょっとそれは本心ではないことは自分でも気づいているし、気を抜くと真顔になってしまいます。

 このへんのめるるの繊細な表情芝居と、律くんには笑顔を向けるけど水槽に映る自分の顔は全然楽しそうじゃないという、その演出。俳優部と演出部のやりたいことがガッチリ噛み合ってる感じが、見てて興奮するわけですよ。ああ、いい仕事やってんなぁと思うんです。

 この場面、まことさんとしては、自分の表情をコントロールできてないということを表現するシーンなんですね。デートすべき相手とデートしてるんだからずっと楽しそうにしてなきゃいけないという責任感のようなものがあって、それでも本当は別に楽しくないから、つい表情がなくなってしまう。そういう「人の感情はアンコントローラブルである」という意味のシーンを、役者と演出が完全にコントロールして映像にしている。そうして律くんとまことさんの距離感を描くことで、やっぱり好きとかデート相手とかを「べき」で選ぶのはよくないよなという感情を伝えてくる。

 このドラマ、脚本がよすぎてあんまり演出のほうの話はしてこなかったですけど、「公太郎さん(瀬戸康史)×まことさん」と「律くん×まことさん」のキスシーンの色味の対比とか、脚本の行間を画面で補足している場面もたくさん見られて眼福だったんですよね。ドラマを見ていて、お話がおもしろいのがもちろん一番うれしいことですけど、こうやって関わっている人たちが力を合わせていいものを作ろうとしている姿勢が見えることもまた、ドラマを見る楽しみだと思います。