月の輪自動車教習所は、5月に、福祉タクシー「月の輪クローバータクシー」の業務をスタートした。

福祉タクシーサービス開始の背景

月の輪自動車教習所は、2023年に3,284名の高齢者講習を実施している。その中で、運転免許の自主返納を検討する人はほとんどいなかったという。

理由としては、「足が悪くて病院まで行く手段がない」「近くにバス停がなく買い物も苦労する」といった意見が多く、日常生活における移動手段に不安を感じる受講者が増加していることがわかった。

月の輪自動車教習所では、高齢者に安心して免許を返納してもらえるよう、長年にわたりその支援策を模索。


そこで、民間救急も利用できる福祉タクシーサービスを開始して、免許返納や自動車の所有状況に関わらず、地域の人々が、安心して暮らせる地域の実現に貢献するためにサービス開始を決めた。

救えるはずの命を守るために

現在、救急車不足が深刻な社会問題となっており、迅速な医療対応が困難な状況が生じているという。

全国的に出動件数が増加するなか、大津市でも2023年度の救急車の出動件数は過去最多の20,795件、初めて2万件を超えている(※1)。

その中には、救急車が不要であった可能性があるものも含まれていたとされており、緊急に病院へ搬送する必要がある人のもとに、救急車の到着が遅れてしまう恐れもある。

2022年度の調査では、救急車が不要だったとされる、入院の必要がなく診察後に帰宅した軽症者への滋賀県の出動割合は59.8%であり、これは京都と並び全国で一番多い割合だ。

そして、2023年度の大津市においては、68.5%と報告されており、全国の都道府県統計の平均48.4%に対して、非常に多い割合になっている(※2)。

そこで、月の輪自動車教習所は地元企業として、この課題に積極的に取り組むことにした。


消防署での訓練を受けたプロフェッショナルなスタッフが、患者の安全と健康を第一に考え、地域住民の安全と健康を支える使命を全うしていくという。

民間救急に認定

月の輪自動車教習所は、6月4日(火)に、民間救急として大津市消防局から認定を受けた。

民間救急(患者等搬送事業)は民間企業などによって運営されており、一般的に、緊急性の低い患者や計画的な搬送が必要な患者を対象にしている。

本来の消防救急の役割を支えることが目的だが、救急車とは違い、緊急走行は行うことはできない。主に施設からの通院や、病院間の転院などに利用される。また、冠婚葬祭や旅行などの移動・移乗が困難といった場合に利用することも可能だ。