◆この作品、主人公には本当にたくさん救われた

市原隼人
――俳優のキャリアが25年「しか」と表現されるのは、とても謙虚ですね。今仕事に対してどういう想いで取り組まれているのですか?

市原:今は壁打ちのような状態です。正解がない世界ですので、答えを求めれば求めるほど、答えが逃げていくような世界でもある。とにかく毎日毎日、真っ暗な泥の中に手をつっこみ、なんとか夢をつかめないか、手探りのような状態。その中でも自分が信じられるものを持ち続けていたいんです。

歩いて泣いて走って笑って、誰でも出来ることを僕らはやっている。それでお金をいただくなんて……と、感じたこともありました。だからこそ、情熱を込めなくてはいけない。より作品に愛情を持ち、その根源を見つめて、本気で泣いて本気で笑って、本気で悔しがれる心を持つ。それはお客様のためであり、そのためにすべてを尽くさなければいけないと感じてからは、またガラッと役者という職業に対しての想いは変りましたね。

――ちょうど5年くらい前にこのシリーズが始まるわけですが、その想いはすべてこのシリーズに投影されているのではないでしょうか。

市原:そうなんです。『おいしい給食』という作品は、制作する人間すべての夢なんです。根底はコメディーですが、社会派であり、しっかりとしたメッセージがあり、僕はこの作品にも、自分が演じる甘利田幸男という男にも、本当にたくさん救われています。それをひとりでも多くのお客様にも感じていただいて、人生を楽しむ気持ちを忘れないでいただきたいです。