◆中学受験の未来予想図
とはいえ、この加熱具合に親としてどうすべきかと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。数年続く中学受験ブームを少し俯瞰し、今後、中学受験市場の動向はどうなっていくか、長谷川さんが考える未来予測図を教えてもらいました。
「今後の受験率は高まり続けるとは思いますが、若年人口は減っていますから、全体の受験人数は増えない状況になると思います。しかし、今後は“完成度の高い受験生”は増えていくことになります。
現在もすでにそうですが、10年前ならトップ校に入れる500人くらいの完成度の高い子が、今は1500人くらいに増えています。その証拠に、昔は開成や麻布といった難関学校に楽勝で受かりそうな子が、ここ数年で落ちまくっています。こうした競争の激化は今後も進み、結果としてトップ校からレベルが落ちる学校にも、優秀な子がゴロゴロ入る状況になると思います」
どんなに頑張っても、頑張る子が増えれば厳しい戦いとなる。他者との相対評価となるのは受験のつらいところですが、それをフォローする塾にも変化が起きそうだと長谷川さんは予想します。
「SAPIXの台頭により、予備校のようにハイレベルカリキュラムを早期におこなう塾が増えてきました。しかしネットによって、そのカリキュラムや攻略方法も手に入るようになり、優秀な子がどんどん増えています。
そうなると、『SAPIXに入れればトップ校に合格できる』といった神話は崩れ、今度は『フォローがなさすぎる状況は子どもにとって良い環境と言えるのか』といった価値観に振れると予想します。そうなってくると、さすがに世話を焼く塾が増えていくのではないでしょうか。でも、現代の子どもたちは怒られ慣れていませんから、怒らないことと手厚いフォローを両立させるのは、なかなか困難だとは思いますけどね」
激化がとまらない中学受験市場。子どものための最善の選択はいったい、何なのか、多くの親が迷う気持ちが、少し分かったような気がします。
【長谷川智之】
ブログ名はジュクコ。1980年兵庫県明石市出身。高卒の両親のもとに育つもハードな中学受験を経験。白陵中学校・高等学校を経て、東京大学卒業後、大手塾に勤務、人気講師となる。2009年に独立してフリーランスの「プロ家庭教師」に。年間300件を超えるコンサル申し込みが殺到する。甲冑メタルバンド「Allegiance Reign」のベーシストとしても本気で活動中。ブログ「お受験ブルーズ」を運営。近著に『中学受験 奇跡を引き出す合格法則 予約殺到の東大卒スーパー家庭教師が教える』(講談社)など
<取材・文/おおしまりえ>
【おおしまりえ】
水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518