岡山県倉敷市にある「きび美ミュージアム」では、4月27日(土)~6月16日(日)の期間、釉薬を使用しない独自の曜変天目(ようへんてんもく)技法で知られる備前焼作家・山根彰正氏の作品展「備前まだ見ぬ世界へようこそ-山根彰正作品展-」を開催している。

同展では、備前焼の未探索の可能性に光を当て、日本の伝統工芸の新たな境界を示す。

釉薬を使用しない独自の曜変天目技法

通常、陶芸の世界では、陶磁器の表面に光沢を出し、液体のしみ込みを防ぐのに用いるガラス質の薬品「釉薬(ゆうやく)」を使う。


山根彰正氏は、過去の国宝級の作品を超える作品を作るという思いのもと、釉薬を一切使用せずに、土・焼き方・火の温度管理を工夫することで、光沢を再現する独自の製法「曜変天目技法」を開発した。



曜変天目は、天目茶碗のうち、最上級とされるものを指す。漆黒のなかに星を思わせる斑紋が瑠璃色の光彩をまといながら浮かぶ、独特の文様をしており、徳川家康をはじめ多くの歴史人物や陶芸家を魅了してきた。日本国内では3つの曜変天目茶碗が国宝に指定されている。

なお、釉薬を一切使わない曜変天目は世界で初めての製法なのだそう(*)。

曜変天目茶碗約40点を展示


「備前まだ見ぬ世界へようこそ-山根彰正作品展-」では、山根彰正氏による釉薬を使用しないことで土本来の色や質感を最大限に活かした、曜変天目茶碗約40点が一堂に会する。



曜変天目技法によって、一点一点異なる作品が生み出され、その一瞬の美しさを見ることができるという。特に注目すべきは、これまでの備前焼にはない独自の色彩と質感だそうだ。これらの作品から、新たな美の境地を感じるかもしれない。

きび美ミュージアム館長・白井洋輔氏は、「備前焼は本来、備前の粘土を用い、備前の窯で1200℃で焼成する、釉薬は一切使わない焼物です。釉薬を用いずして、このように多彩な天目茶碗が産み出されるのは、本当にミステリアスではないでしょうか(一部抜粋)」とコメントしている。

なお、きび美ミュージアムで特定の作家の作品を集めた企画展を開催するのは史上初とのこと(*)。また、釉薬を一切使わない曜変天目の作品展は日本初開催なのだそう(*)。

きび美ミュージアムについて


「きび美ミュージアム」は、岡山県倉敷市の美観地区「くらしき宵待ちGARDEN」内に2021年4月29日に開館した文化施設だ。

「吉備と出会う 吉備に恋をする」をコンセプトに、郷土ゆかりの文化財を展示し、先人たちの技や知恵、美意識、世界観を伝えている。