仮処分を認めてもらえれば、預貯金の全部または一部を合法的に引き出すことが可能です。以下の3つが要件になります(家事事件手続法200条3項)。

① 遺産分割の調停・審判が家庭裁判所に申し立てられていること
② 相続人が、相続財産に属する債務の弁済や相続人の生活費の支弁その他の事情により、遺産に属する預貯金を払い戻す必要があると認められること
③ 他の相続人らの利益を害さないこと

トラブルには注意

結局のところ、銀行に親が亡くなったことを知らせずにお金を引き出したとしても、罪に問われるわけではありません。

ただし、後々トラブルになる可能性が高いため、預貯金の仮払い制度や預貯金債権の仮分割の仮処分などを活用しましょう。やむを得ず引き出す場合は、自身の相続分を超えて出金しないこと、他の相続人にも目的と金額を伝えることが大切です。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日商簿記検定1級、貸金業務取扱主任者(試験合格)