世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスは、日本経済にも多大な影響を与えています。経営が立ち行かなくなり破綻する企業や、定期採用を取りやめる企業も増加傾向です。また、経営悪化にともない従業員を解雇する企業も出てきています。今回は、こういった状況下だからこそ知っておきたい「失業保険」「失業手当」と、コロナ禍に伴う特例措置について紹介します。

コロナショックの影響で失業者が急増!?

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新型コロナウイルスの発生や感染拡大に伴い、2020年4月に全国的に緊急事態宣言が発出され、外出の自粛はもちろんのこと、店舗営業やイベント開催の自粛などが要請され、経済活動の大半がストップしました。

それによって経営難に陥る企業が増加し、経営悪化の状況を受けて従業員の解雇を検討する企業も出ているようです。

実際に2019年の完全失業率平均は2.4%だったのが、2020年に入ってから上昇し7月には2.9%となりました。冬にかけて新型コロナウイルスの再流行も懸念される中で、一部のエコノミストは、年末までに完全失業率は4%弱まで上がるのではと予想しています。

万が一失業してしまったら、失業手当の受給を検討しよう

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こういった状況の中で万が一失業したときに備え、受け取れる失業手当について詳しく見ていきましょう。

失業保険・失業手当とは

失業保険とは正式には雇用保険といい、社会保険制度の1つです。そして雇用保険加入者がさまざまな理由で離職し、再就職するまでの失業中に支給されるのが基本手当となります。基本手当は、一般的に失業手当とも呼ばれています。

受給条件は、退職理由が「自己都合」と「会社都合」で大きく異なる

失業手当を受け取れる日数や期間は、年齢や雇用保険加入期間、離職理由などによって異なります。

一般の自己都合による離職者は、企業の倒産・解雇によって再就職の準備をできずに離職した「特定受給資格者」、自己都合による退職でも正当な理由がある「特定理由離職者」と、受給制限や受給期間、給付日数が異なります。

ここでいう一般の離職者とは、キャリアアップや自分の望む待遇を求めて転職や独立をする自己都合の退職をいいます。

なお失業手当の支給を受けるためには、次の加入状況(雇用保険)が条件となります。

  • 一般の離職者の場合
    離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること

  • 特定受給資格者・特定理由離職者の場合
    離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること

失業手当の金額、給付日数の違い

ここからは、具体的に失業手当がいくらもらえるのか、またどれくらいの日数もらえるかチェックしていきます。

失業手当の1日当たりの給付額を基本手当日額といいますが、これは離職前に受け取っていた賃金をもとに計算します。原則、次の式のように計算し、「賃金日額」「基本手当日額」とも上限が決まっています。

【基本手当日額=賃金日額(退職前6ヵ月の賃金合計÷180)×給付率(50%~80%)】

<賃金日額や基本手当日額の上限額>

離職時の年齢 賃金日額の上限額 基本手当日額上限額
29歳以下 1万3,700円 6,850円
30~44歳 1万5,210円 7,605円
45~59歳 1万6,740円 8,370円
60~64歳 1万5,970円 7,186円

<賃金日額・基本手当日額の下限額>

年齢 賃金日額の下限額 基本手当日額の下限額
全年齢 2,574円 2,059円

この基本手当日額にそれぞれの条件を当てはめていくことで、失業手当の金額が決まります。次に給付日数について見ていきましょう。

<一般の離職者>

被保険者であった期間 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
全年齢 90日 90日 120日 150日

<特定受給資格者や特定理由離職者など>

被保険者であった期間 6ヵ月以上1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 90日 120日
(※90日)
180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 150日
(※90日)
180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

*受給資格に係る離職日が、2017年3月31日以前の場合

なお、失業手当を受ける際には受給制限が設けられており、離職理由が「自己都合」と「会社都合」で大きく異なります。

また受給期間は原則、離職した日の翌日から1年間となっています。例外事案があれば延長もできますが、手続きを忘れて受給期間が短くならないように注意しましょう。