◆道隆、最期のとき

NHK『光る君へ』第17回
不安を残したまま、道隆は床に臥せっていた。妻の高階貴子(板谷由夏)に手を握られながら。

そして道隆は「わすれじの行末まではかたければ 今日をかぎりの命ともがな」と口にする。これは貴子の歌だ。道隆と結ばれ、新婚のころに詠んだもの。「いつまでも忘れないと言うけれど、先のことは分からない。その言葉を聞いて幸せな今日、いまここで命が終わればいいのに」という意味だ。ものすごく率直な歌でびっくりする。幸せの絶頂にいるときにもう今日死んでもいいです! と思うことはあるが、貴子は道隆との日々の中でそう感じていたのだ。それを最期のときが近づいているときに道隆が口にする。切ないやら、幸せやら……。道隆は関白としては眉を顰める人だったかもしれないが、人を愛することを大事にしていた人なのだろう。