衝動殺人の中でも、明確に殺意を持って刺したのが第3話。そのほか、殺すつもりはなかったのに衝動的に暴力をふるったら勢いで相手が死んでしまったというケースがあります。

 ここが、今回の第4話ではあいまいだったんです。

 夜中の厨房。オーナーの男性に捨てられると思い込んだパティシエは、ココナッツに目を留めます。そしてオーナーの背後から後頭部にココナッツを叩きつける。このとき、ものすごく冷静なパティシエの横顔が映し出されます。

 ところが、頭から血を流して倒れるオーナーを見ると、パティシエは激しく狼狽します。そして、しばしその場に座り込み、「あなたがいなくなったら、ここにいる意味ないじゃない」とひとりごちるのです。

 え、何、どっち? と思ったんです。衝動的に殺そうと思ったなら厨房なんだから包丁だってあるはずだし、包丁よりココナッツのほうが確実に殺せると思ったなら不自然だし、殺すつもりがなかったならココナッツを振り下ろしたときの冷静な横顔はなんだったのか。

 今回の場合、その殺人が「物理的にムズイぞ」と「どういうつもりだったんだ?」の2つが引っかかってしまった。「ん?」が1コなら飲み込めるけど、2コ重なると飲み込み切れない。

 単純に、ココナッツを使ったトリックをやりたいというところから逆算して事件を作っているわけですが、最後の段で慎重さを欠いていると感じた部分です。ミステリーである限り、そこは厳密にやってほしい。ドラマを楽しみたいという気持ちの表れですので、ご勘弁ください。