コロッセオの役割
ローマ時代のコロッセオは、年間100日以上のイベントが開催され、ローマ市民は無料で入場することができました。イベントは、猛獣vs剣闘士、剣闘士同士、時には、罪人の処刑なども見世物にされました。驚くのは、アリーナに水をはり、船を浮かべて海戦を再現することもあったそうです。その上、小麦やパンの配給などもされていました。これらの目的は、権力者や政界で出世しようとする者が、自費で試合を開催し、民衆の関心をひこうとしたり、問題点の多い政治から市民の目をそらそうとしたりする王の狙いでもありました。
コロッセオの見どころ
高い建築技術
2千年の時を経てもなお、見事な姿をみせるコロッセオ。古代ギリシャの異なる建築様式で建てられており、建築技術の高さは外観からも見てとれます。1階は、装飾のないシンプルな柱が特徴のドーリア式アーチ。2階は、柱上部の左右に、渦巻き模様が施されたイオニア式アーチ。当時は、すべてのアーチ部分に彫像が置かれていました。3階は、柱上部に葉の彫刻が施されたコリント式アーチ。4階部分は、アーチがない壁で日よけ用のロープを張るための穴があいています。材料は、火山灰から作ったローマン・コンクリートと呼ばれるものでした。
階級別の階層
コロッセオの観客席は、階級により区別されていました。1階は貴族階級、2階には騎士、3階には一般市民、最上階は奴隷や女性の席となっていました。最上階の階段はわざと狭く造られており、身分の高い階級の人々がスムーズに退場できるよう工夫されていました。南北の中央は、高官や神官の席で、十字架の奥が皇帝の席でした。
日よけの工夫
最上階部分には、日よけ用キャンバス製の天幕を張るため、外壁にロープを渡していました。これによって、日差しが強い日も雨の日でも楽しむことができました。また1日20分以上の陽が当たらないように、工夫されていたとも言われています。
複雑な地下
深さ6mほどの地下には、世界中から集めてこられた猛獣の檻(おり)、試合に出場する奴隷たちの牢屋などがありました。現在アリーナの床は、ほぼむき出しになっているので、区切られた地下の様子をみることができます。細かく区切られた地下の壁はアリーナの床板の支えにもなっていたわけです。
当時は、板張りの板の上に砂を敷き、試合で血に染まった砂は、交換されていました。当時は、手動のリフトのような、せり上げ装置も設置されていたそうです。また、コロッセオの東隣につくられていた剣闘士養成所とは、地下道でつながっていました。
剣闘士や罪人たち
コロッセオで戦いの日々を送った剣闘士たちの多くは、ローマと戦い、敗れた国々の兵士たち、捕虜となった人々でした。中には、女性剣闘士もいたという痕跡が出土しているそうです。勇ましく戦い、英雄のように称えられた者や、貧しい身分の中から、自ら志願して剣闘士になった者もいて、剣闘士養成所の周囲には宿舎の小部屋もみつかっています。
当時に想いを馳せる
コロッセオの見どころをご紹介してきましたが、内部には写真や絵、模型と共に、出土品などが展示されているコーナーもあります。
また完成当時は、白大理石で贅沢に装飾されていたコロッセオですが、修復された観客席部分で当時の面影を見ることができます。コロッセオは、1980年に世界文化遺産に登録されています。