◆『光る君へ』はやっぱりまひろと道長の物語

NHK『光る君へ』藤原道兼
そして改めて、『光る君へ』はまひろと道長の物語だとした。

「やっぱりここにはまひろと道長が描かれていて、ふたりの物語がドラマチックに、彩り豊かになればと思ってやっています。いろいろな登場人物がいて、いろいろな物語が描かれ、出世したり、亡くなったりしていきます。けれど究極、ふたりの物語だと僕は思っています。特に序盤はそれが如実なので、彼らの起爆剤とか、彼らの家族の起爆剤になれればなと思っていました」

とはいえすでに道兼は、起爆剤以上の存在として、視聴者を引き付けている。父・兼家(段田安則)との関係に縛られていた道兼だったが、第14回「星落ちてなお」でその父も死に、長男・道隆(井浦新)が関白に。もぬけの殻のようになった道兼だったが、ここから道長との関係が大きく変わっていった。

「これまで道長に対してひどいことをしてきた。でも第15回(「おごれる者たち」)で、ベロベロになっている道兼のところに道長は来てくれて、声をかけてくれるんです。“変われますよ。兄上は変われますよ”と。避けず、逃げず、きちんといま道兼に必要な言葉を、弟である道長がぶつけてくれるというのは、すごいエネルギーのいることだし、道長の中でも乗り越えなきゃいけないことがいっぱいあるやり取りだったと思います。道兼の中で、あそこで道長に対しての感情がガラッと変わったんです」

道長との関係が大きく変わった道兼は、その生き方自体を大きく変えていった。

<取材・文/望月ふみ>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi