◆晴れやかで爽快な人間性

 しかも「はい」とだけ答える結木の公表が、いかにもさりげなく、いかにもさわやかだった。

 この人はほんと、絵に描いたように爽快な人だ。瀬戸内の島を舞台にした映画『凪の島』(2022年)に出演した結木に筆者がインタビューしたとき、カラッと晴れやかな雰囲気には驚いた。

 複数のメディア合同での取材だったのだが、メディア間でやや質問が重複しても嫌な顔ひとつせず、丁寧に飲み込むように受け答えする。ときおり笑顔から深い味わいなのに、それでいて軽快な笑い声がこぼれるのも好印象だった。

 結木が演じたのは、吃音症の漁師・浩平。心の底から優しく、ピュアな浩平が冒頭、ぎっくり腰になった仲間の漁師をタンカーで運んでくる場面がある。

 タンカーを持った手が後ろ手になり、窓を叩く瞬間の表情がとにかく素晴らしかった。