◆急なタップダンスの“妙に耳に残るリズム”

 神木はもともと、登坂不動産でトップセールスをあげていた凄腕営業マンだった。トップの座に異常なまでにこだわる彼は、ちょっとした拍子で永瀬にその座を奪われたことから、会社を去ることになった。

 別に一回くらい。そう思うが、神木にはその一回でも許せない。不動産業界から消えたはずの彼が、登坂不動産と敵対するミネルヴァ不動産社長・鵤聖人(高橋克典)の画策で同社に入社。さっそく、永瀬から顧客を横取りしようとする。

 エレベーターの扉が開いたと同時に颯爽と歩き出す。このまま宙を舞ってしまえるくらい、神木の足取りは軽快そのもの。どっこい、ピタリと合わせた足元はいきなりタップダンスのようなステップを踏む。

 トップに返り咲こうと悪戦苦闘し、祟られている永瀬の「アツツツツ、アツッ」に対する、「タタッ、タタッ」のステップの一定なリズムが、なぜだか妙に耳に残る。