◆『法廷遊戯』での“無表情”の中の演技

法廷遊戯
『法廷遊戯』公式サイトより
 映画『法廷遊戯』(2023)は、同名小説を映画化した法廷ミステリーだ。杉咲花が演じるのは「血の付いたナイフを持ったまま親友の遺体のそばにいた」女性であり、それを目撃したのが永瀬廉扮する幼馴染で弁護士の主人公。そこから、二転三転する事態を経て、苛烈な過去と真実が浮かびあがっていく、いわゆる「どんでん返し」系の話運びが大きな魅力となっている。

 同作での杉咲花は主人公だけでなく観客にとっても「真意がわからない」キャラクターであり、劇中の多くで無表情に近い表情でありながらも、「何かを考えているような」印象も同居させている。

 ネタバレになるので詳細は伏せておくが、終盤では杉咲花というその人さえも、もはや恐ろしい存在とさえ映る、とてつもない演技をしていた。人によっては過剰にも感じてしまうかもしれないが、「この役にはこれほどの狂気的な表現が必要だった」と、個人的には大いに納得できた。