◆一見草食系だが獣性を隠し持つのが魅力

長谷川博己は、故・蜷川幸雄には「ホワイトアスパラ」と言われていたほどで、一見、草食系の代表格のように見えるが、案外、獣性を隠しもっている。それが長谷川博己の魅力であり、「チャオ」から遡(さかのぼ)ること5年前、不倫ドラマ『セカンドバージン』(10年 NHK)で、スーツの似合う知的エリート(金融庁の官僚)を演じて女性人気を獲得したときも、仕事にも恋にも背徳を行う役だからこそ女性視聴者の心を掴んだ。

「セカンドバージン」アミューズソフトエンタテインメント
「セカンドバージン」アミューズソフトエンタテインメント
『鈴木先生』(11年 テレビ東京)、月9『デート~恋とはどんなものかしら~』(15年 フジテレビ系)でも頭は抜群にいいが一風変わった人物を演じて、男女共に人気を得るようになる。見た目はしゅっとしているが、一筋縄ではいかない、たぎる理念や野心を秘めた曲者の役を演じると抜群。

主演映画『はい、泳げません』(22年)では、水が苦手な哲学者の役で、最初、コミカルな物語かと思わせて、彼の水への怖れが人間の深い内面に潜っていく意外性が妙味だった。