◆『MOZU』の名台詞「チャオ」のインパクトがすごい

『獄門島』の長谷川博己の魅力は、戦争のトラウマを引きずっているところである。横溝正史の金田一耕助シリーズの事件は戦後日本の闇が背景になっているが、これまでの数々の映像化では金田一当人に社会的背景を背負わせるのではなく、あくまで金田一は傍観者として存在した。

それが長谷川金田一は極めて能動的で、復員兵であることが強調され、時々、戦争のことを思い出して感情を揺らす。人が人を殺すことに強い興味を持ち、それをモチベーションにして事件の真相を追うのだ(最後に彼の言う、事件を追った理由はぞくりとなる)。

その結果、犯人を追い詰めたときの「無駄!無駄!無駄!」「無意味!」と叫ぶ感情の高揚が、彼の代表作のひとつ『劇場版 MOZU』(15年)の名台詞「チャオ」のようだとSNSで受けた。この「チャオ」のインパクトはすごいもので、長谷川博己を起爆力のある俳優として認知させた。